立木レポート (三)
イ 〇二一
発 代理人二十五号
宛 東部方面連絡中継所
秘匿任務第三八九七号継続報告(二一)
及
秘匿任務第三九九六号継続報告(六)
潜入二三日目。
午前、以前から工作を行っていた大伴製薬本社所属研究員と接触。工作対象は既に数回にわたりこちらが供した金品を受け取っており、協力者として利用できる水準に達しているものと判断した。
今回の聴取において対象甲群“神代正樹”直轄の研究室が、研究機材の移設作業にとりかかっているとの情報を得た。移設先は建設中の“大伴タワー”最上階とのこと
なお移設作業の開始と前後し、白鈴會幹部らしき数人の男たちが神代の管理する研究室を頻繁に出入りするようになったとの情報も得られた。協力者の話によると、これまでも白鈴會関係者はしばしば研究室に出入りしており、時には幹部だけではなく一般信者をともなって入室することもあったという。
白鈴會の理事が黒潮豪蔵の妻であるという相関を差し引いて考慮しても、これは不自然と言わざるを得ない。機密性の高い製薬会社の研究室に部外者、しかも時として一般信者までもが入室していたという事実は、彼らが秘密を共有していた証左と考えるべきであろう。
大伴製薬ひいては対象甲群が守るべき秘密とは、彼らが独自に開発を進めている新兵器がその筆頭である。
対し、白鈴會が最優先で守るべき秘密とはなにか。それはおそらく“本尊”であろう。
継続報告(一二)に記したように、白鈴會は“本尊”については非公開を貫いている。一般信者が直接“本尊”を目にする機会は、原則的には教祖“黒潮真耶”によって施される儀式の際に一度限りとされている。
新興宗教の“本尊”が兵器開発に関わっているとは、常識的には考え難い。しかし追加秘匿任務第三九九六号実施要項における 「ガ號計画」と「神楽遺跡」の関連調査 という部分はこれを示唆しており、加えてこれまでに調べた事実を抽象すると現時点ではそのように推測する他はない。急ぎ“本尊”の詳細調査の要ありと認めるものである。
(編者註:ここに至り、立木は上位者から下された追加任務が妥当なものであったと認めた節がある。つまり、神楽遺跡と新兵器開発計画の関連性を自らの調査によって実感したということである)
◆
午後、上記方針に従い白鈴會内部の協力者と接触を図る。その際先日の“如月奈美”殺害事件の現場周辺で“骸骨男”を目撃したとの情報を得た。これを契機とし、本任務の関連事案として前回報告に記した“如月奈美”殺害事件に関し調査を行いたい。現状においては優先度の低い事案かもしれないが、最優先任務に関わる可能性はあると判断する。
その理由だが、まず端的に述べると潜入調査開始からこれまでの間に白鈴會信者が死にすぎている。大伴市における白鈴會信者の割合を考慮しても、これは多すぎる数である。事実対象甲群が造反者とみなし抹殺したと思われる一三名を除くと、“骸骨男”の犠牲者はすべて白鈴會信者である。
前回報告で記したように、“如月奈美”殺害事件の犯人は警察発表では対象丙群“御子神隼人”とされている。しかしこれはいままでの経緯およびこちらが観察した御子神の人物像を前提にした場合、あまりにも唐突かつ不自然であると言わざるを得ない。先述の目撃情報と併せ考えると、今回の殺害も“骸骨男”の手によるものと考えたほうがまだしも自然である。
以上複数の要素を鑑みると、この事案にはいくつかの重要な示唆が含まれていると思われる。まずは警察当局より先に“御子神隼人”との接触を図り、情報を得たい。
夕刻、御子神の足跡をたどるべく滞在していた大伴製薬旧社宅周辺を調査。その際大伴警察捜査一課刑事“新條剛”と遭遇。新條はピッキング用具を用いて御子神宅の解錠を試みようとしていた。
新條に対しこちらが行為を見咎めている旨を示唆すると、彼は解錠をあきらめこちらの身分を尋ねてきた。表向きの身分を明かしつつ御子神が手配されるに至った経緯について聴取したところ、事件の目撃者は対象甲群 大伴警察署長“埴輪儀助”のみであるとのこと。埴輪が対象甲群における上位者の傀儡であることを考慮すると、やはり御子神が犯人であるという当局発表は極めて疑わしいと言わざるを得ない。
新條が埴輪をはじめとする警察上層部に対しよい感情を持っていないことは既にわかっていたので、上述の疑念について結論部分のみを新條に告げ、当方の協力者になってほしいとの意を伝えたところ、新條は逡巡しつつその場を立ち去った。
なおその後こちらはその場に留まり、御子神の情報を得るべくピッキングによって居室の扉を解錠し侵入。室内の調査を実施したが、有効な手がかりは得られなかった。
(編者註:ここにまた、立木のしたたかさを見ることができる。立木は新條のピッキング行為を制止しておきながら、彼がその場を離れた後に自分はぬけぬけとそれをやってのけている。まさに老獪と言うべきで、これもまた一流の諜報員が持つべき資質のひとつである)
今回の報告は以上とする。
◆
イ 〇二二
発 代理人二十五号
宛 東部方面連絡中継所
秘匿任務第三八九七号継続報告(二二)
及
秘匿任務第三九九六号継続報告(七)
潜入二四日目。
午後、白鈴會の古参信者および五〇歳以上の旧神楽村出身者数名に対し聞き込みを実施。白鈴會の“本尊”に関する情報を聴取した。
聴取内容を総合すると、“本尊”は白鈴會の教義上では「黄泉の国から来迎したもの」とされているが、その実態はダム湖に沈む前の旧神楽村で発掘された遺跡であるという。白鈴會の創始者である“番場宗吉”すなわち“神楽辰之”が掘り出された遺跡を“本尊”とし、現在の白鈴會につながる新興宗教をその時期に立ち上げたという顛末であったらしい。この聴取内容はここまでの調査報告における推測と一致する。
さらに聴取を進めたところ、“本尊”には“神の力”が宿っており、現在その力を引き出せるものは白鈴會の教祖“黒潮真耶”ただひとり、とのことであった。しかしその“神の力”が具体的にどのようなものかと尋ねると、返答はとたんに宗教的・超科学的な表現になり、情報としての有用性が認められないものとなってしまう。聴取ではこれ以上を望むべくもなく、やはり早急に“本尊”に対する物理的な直接調査を行う必要があると思われる。
今回の報告は以上とする。
◆
イ 〇二三
発 代理人二十五号
宛 東部方面連絡中継所
秘匿任務第三八九七号継続報告(二三)
及
秘匿任務第三九九六号継続報告(八)
潜入二五日目。
午後、ブレインギア社ヴォグートの動向を観察。目立った動きはない。
なおブレインギア社私設部隊全般に関する既知の資料を受領した。構成人数・部隊章等から判断し、継続報告(一九)にて報告した部隊は ブレインギア社 先進兵装戦術実験隊 通称“サークス” に該当するものと思われる。
この部隊の大伴における具体的な行動目的はいまだ不明であるが、現在のところヴォグートと同じホテルに滞在している模様。夜、対象甲群“神代正樹”の動向を観察。依然自室には帰宅せず、当方と同じホテルに滞在中。
神代、深夜に外出。これを尾行したところ、ホテル近くの路上にて対象甲群“船越英明”と接触。
見通しのよい路上での接触だったため接近できず、従って具体的な会話内容は把握できなかった。
しかしこれまでの経緯を考慮した場合、この両名は大伴製薬の経営権奪取に関する密談を行っていたと見るのが妥当であろう。なお密談は数分で終了し解散した。
その後船越は放置し神代の尾行を継続。神代は一旦ホテルに戻り、ホテル駐車場から自家用車にて再度外出し大伴市郊外に向かう。神代の車両が路上に停車した数分後、新たに別の自家用車が接近し神代の車両に対して横付けの形で停車した。
後に現れた車両の後部座席に対象丙群 陸軍少佐“石動寛治”を確認。
両名は互いに車両の窓を半分程度降ろし会話をしていたようであるが、船越との密談時同様見通しのよい路上であったため接近は困難で、具体的な会話内容については聞き取れず。
石動の動向に関しては潜入調査開始初期に対象甲群“黒潮豪蔵”に対し儀礼的な訪問を行った他にはこれまで特筆すべきものはないと認識していたが、その様子から見て神代との密会はこれが初めてではないと思われる。
石動が大伴市を訪れる目的として最もあり得べきものは、軍内部での地位向上を図るため黒潮豪蔵の後ろ盾を得ることであろう。しかし現状において神代と船越は黒潮から支配権を奪い取らんと画策しており、石動の行動はその情勢を把握した上でのものと見るのが妥当である。対象甲群の支配構造が変容しつつある今、石動の動向にも注意を払う必要が生じたと判断する。
今回の報告は以上とする。
◆
イ 〇二四
発 代理人二十五号
宛 東部方面連絡中継所
秘匿任務第三八九七号継続報告(二四)
及
秘匿任務第三九九六号継続報告(九)
潜入二五日目。
午前、市内を移動中に軍用車両の大規模な陸送を目撃する。車両に付けられている登録番号標を所持している一覧表と照合したところ、県内他都市の駐屯地に所属する部隊と判明した。
本部がこれに関する情報を把握しているのなら、即座に提供されたい。
今回の報告は以上とする。
◆
イ 〇二五
発 代理人二十五号
宛 東部方面連絡中継所
秘匿任務第三八九七号継続報告(二五)
及
秘匿任務第三九九六号継続報告(一〇)
潜入二五日目。
石動を首謀者のひとりとする武力政変(編者註:クーデターの意)の計画に関する情報は受領した。
ならびに、大伴市内における石動ならびに石動指揮下の部隊については調査・監視・報告の必要なしとの指令も了解した。
引き続き、“ガ號計画”“神楽遺跡”に関する調査を優先的に行うものとする。
なお、連絡拠点C(編者註:喫茶店「カサブランカ」のことである)の担当工作員には撤収を勧告した。以後の連絡は暗号文を直接打電にて中継所に発信する。以上、了承されたい。
今回の報告は以上とする。
※編者註:イ 〇二三 から イ 〇二五 までを併読すると、立木の上位者は石動のクーデター計画をかなり早い段階で察知しており、その上で立木に対してはそれを伏せていたのではないかと窺い知ることができる。緊急連絡さながらに短い間隔で送られている立木の報告に対し、軍部の動向への関与を阻害するような指示がこの時点で与えられているという点に着目すべきであろう。つまり立木の上位者は、このクーデター計画そのものには実害がないと事前に断定していた節がある。立木の返信も上位者の事情を読み解いたかのような従順な内容である。ここに、立木の非凡な大局観を見いだすことができるわけである)
◆
ロ 〇一〇
ミツコへ
たまには仕事の愚痴をこぼさせてくれ。
まったく、下っ端というのは、やりきれないもんだ。肝心な情報はまったく回ってこず、紙切れ一枚で右へ左へと振り回される。
大陸で戦争をしていた時にはいやというほどそんな目に遭った。しかしまさか内地で仕事をしていて同じ目に遭うとは、思いもしなかったよ。願わくば、さっさと自営業でも始めたいものだ。
それはさておき、この街は近いうちにちょっと騒々しくなるようだ。しばらく手紙を出せなくなるかも知れない。いや、あるいはこれが最期の手紙になるかも知れない。
ただ、これだけは言っておく。たとえ差し違えることになったとしても、お前と一平を殺したあの男だけは地獄に送る。どうやら使える時間はあまり残っていないらしいが、この約束だけは必ず果たすから、安心して待っていてくれ。
恭一郎
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イ 〇二六
発 代理人二十五号
宛 東部方面連絡中継所
秘匿任務第三八九七号継続報告(二六)
及
秘匿任務第三九九六号継続報告(一〇)
潜入二五日目。
午後、白鈴會“本尊”に対する直接調査を決行すべく、ダム湖に浮かぶ社に向かう。
道中、ダム湖周辺の林野部で複数のブービートラップを発見。
トラップの総数は確認できたものだけで五十八カ所。種別は信管に鋼線が結接されている炸薬がおよそ七割を占め、その他はすべて指向性地雷であった。対象範囲は湖畔のほぼ全周に及んでおり、とりわけ白鈴會の“社”への進入路にあたる区域には高い密度で仕掛けが施されていた。
このため“社”への到達に大幅な時間を消費することになってしまい、午後八時四十五分に至りようやく安全な経路を確保、“社”への接近が可能になる。その時付近で爆発音発生、トラップの作動によるものと断定する。
周辺状況を確認したところ、“骸骨男”ならびに“獣人”と、ブレインギアの私設部隊“サークス”らしき数名の兵士による戦闘が進行中であった。
“骸骨男”と二体の“獣人”は、潜入初期において任務第三八九七号継続報告(二)の中で報告したものと同一であると断定する。既にこれらの尋常ならざる能力については報告済みであったが、今ふたたびその戦闘行為を目撃し、既報の概要をはるかに上回る運動能力・攻撃力を有するものと認定する。主観としては、単独で通常兵力における一個小隊(編者註:一般的に一個小隊は30名から50名で編成される)を容易に制圧せしめる戦力に値するものと思われる。
一方交戦対象である“サークス”もまた、“骸骨男”および“獣人”に互する能力を有するものであった。確認できた兵員数は五名で、それぞれ個別の能力に特化しているように見受けられた。うち二体の写真撮影に成功したので同送する。
写真一 近接格闘戦に特化していると思われる個体。
写真二 砲兵一個分隊に相当すると思われる個体。驚異的な火力と弾薬装備量で、誘導兵器をも搭載していた。
戦闘が終息しない限り“社”への接近は困難な状況であったため距離を保ち戦闘の観察を継続していたが、その最中至近に対象丙群“間宮霧子”ならびに工作対象者“新條剛”の姿を確認。
当然無視すべき状況だったのだが、直後に“間宮霧子”がトラップを作動させてしまい、瞬時にして、自らの安全確保のために両名の前に姿を晒すことを余儀なくされた。その際ついでに両名を爆心から遠ざけ救助した。
(編者註:このくだりにおける立木の言い回しには、どことなくいらだちを感じさせるものがある。彼にとっては長大な時間を費やし、これから本格的な調査を行おうと思いきや、ほうぼうから邪魔が入っているという状態である。いかに冷静な立木といえど無理もないといったところであろうか)
その後戦闘は終息。付近一帯は戦闘の影響で大規模な山火事が発生。
間宮・新條とともに火勢の弱い場所に移動したところ、そこで対象丙群“御子神隼人”と遭遇。御子神と新條の間で小競り合いになりかけたが、これ以上それに付き合っているとこちらの調査に重大な支障をきたすと判断し、新條に対し御子神との一時的な和解を誘導すべく大伴警察署長“埴輪儀助”に対する疑念を想起させるよう教唆する。
新條に対する心理誘導は一応の成功を収め、御子神・間宮・新條の三名は御子神の乗用車にて下山。当方は調査活動を再開した。“社”への移動中、“サークス”の構成員を発見。距離を保ちつつ観察したところ通信機を使用する様子が見て取れたので、ただちに広帯域受信機での傍受を試み通信の傍受に成功した。
以下、その内容を記す。
サークス「こちらゼロワン。総支配人につないでくれ」
女性「わかりました。しばらくお待ち下さい」
サークス「了解した」
(無音状態 一分弱)
男性「私だ」
サークス「申し訳ありません、取り逃がしました。想定していた以上の抵抗を受け(ここで電気火花のような雑音)一体は倒しましたが、こちらも三体失いました」
男性「費用対効果としては良くないな」
サークス「必ず追い詰めます」
(無音状態 約一〇秒)
サークス「捕捉しました。装備をととのえ、再度捕獲を試みます」
男性「ああ。丁重にな」
会話の内容から見て、“男性”はブレインギア社極東総支配人、“アルカード・ヴァン・ヴォグート”であることはほぼ間違いないと思われる。“女性”については不明である。
この通信から、“サークス”の目的は“骸骨男”または“獣人”の捕獲であることがわかる。これはすなわち彼らを指揮監督している“アルカード・ヴァン・ヴォグート”、ひいてはブレインギア社の目的である。
さらに考察を進めると、捕獲すなわち生け捕りを目的としながら獣人のうち一体を倒したという事実から、彼らの捕獲すべき対象は“骸骨男”であったと絞り込むことができる。そして彼らは“骸骨男”が超人的な戦闘力を持っていることを事前に知っていたと見るべきであろう。でなければ極めて殺傷能力の高い多数のトラップと“サークス”の重装備について説明がつかない。
もうひとつ看過し難い点がある。それはこの交戦地域である。
“サークス”はこの地域にトラップを設置し、“骸骨男”たちが来るのを待ち伏せしていた。なぜ“サークス”は彼らがここに来るとわかっていたのか。そして“骸骨男”と“獣人”は、いかなる目的でここに来たのか。
この付近で重要な意味を持ちうる地点があるとすれば、それは大伴ダムと白鈴會本部をおいて他にはない。“骸骨男”のこれまでの行動を振り返ると、彼はつねに“白鈴會”信者を襲撃・殺害し続けている。この点から、“骸骨男”が白鈴會関連施設を目標としていたのではないかという推測が、事後においては可能である。
問題はブレインギア側がなぜそのことを、しかも事前に推測し得たのかということである。
本報告において先述したが、トラップは“社”に近づくほどその設置密度が高くなっていた。これは“サークス”が“骸骨男”は“社”に接近するものと仮定していたためではないのか。
“社”には白鈴會の“本尊”が祀られている。これはすなわち“神楽遺跡”である。
ここまでの事実を整理すると、“骸骨男”は白鈴會の本尊、すなわち“神楽遺跡”に対しなんらかの目的(奪取または破壊である可能性が高い)を持って、“社”への進入を図っていたと推測される。そしてブレインギア側はその骸骨男の行動を事前に予測していた。すなわち、ブレインギアは“神楽遺跡”と“骸骨男”の間に重大な関係性があるということを当初から把握していた、ということになる。
なお、上記の通信傍受完了後、“本尊”すなわち“神楽遺跡”を調査するためただちに“社”へと侵入したが、その時すでに“社”の内部に“本尊”はなく、運び去られた形跡を残すのみであった。“本尊”の行方に関しては、現時点において不明である。
今回の報告は以上とする。
◆
イ 〇二七
発 代理人二十五号
宛 東部方面連絡中継所
秘匿任務第三八九七号継続報告(二七)
及
秘匿任務第三九九六号継続報告(一一)
潜入二五日目。
本部より下された任務実施要項を確認のため以下に復記する。
一.秘匿任務第三八九七号 及 秘匿任務第三九九六号については、本通信の受信後一〇時間以内に可能な限りの情報を収集し、その任務を終了せよ
二.情報収集にあたっては、「ガ號計画」「神楽遺跡」に関するものを最優先とする
上記要項について了解した。
ただし現状において任務遂行にあたり取り得る手段としては、もはや対象甲群上位者への直接的な事情聴取をおいて他にはない。具体的には、これらすべてにおいて最も正確かつ多量な情報を持っていると思われる対象甲群筆頭“黒潮豪蔵”に尋問を行う以外に選択の余地はないということである。これはもはや諜報とは言い難い行動であるが、その点については了承願いたい。
今回の報告は以上とする。
(編者註:なぜ立木の上位者は突然、このような期限を設けたのか。彼らはおそらくこの時点で、石動らのクーデター計画について新しい情報を入手したのではないかと思われる。つまり彼らが想像していたよりも早い時期にクーデターが決行されることを知ったのであろう。立木の上位者はクーデターによって混乱が生じ、得るべき情報が失われる可能性を危惧したわけである。しかしそれにしても無茶な指令で、立木の心労は察するに余りある)




















