立木レポート (一)
立木レポートとは。
「スカルマン」全13夜で重要な役割を果たした立木恭一郎。
本編で明かされる事は無かったその秘められた任務とは?
やがて知る事になる大伴市の深い闇。
任務遂行中の行動や心情を
レポートと亡き妻への書簡の形でご紹介します。
アニメ本編の番外編ともいうべき、もうひとつの「スカルマン」ストーリー。
それが立木レポートです。
どうぞお楽しみ下さい。
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(秘)
資料 大伴市における諜報活動の概要
資料素材
イ.○○国諜報機関が保持する一連の暗号通信文書
ロ.書簡(複数あり)
宛先「東京都八王子市弐分方町○丁目×番地××号 左文字ミツコ殿」
差出人「東京都中央区銀座七丁目×番地××号五階 立木興信所」
資料素材イは、我方の工作員が非合法手段に依って複写し、それを解析班が復号したものである。文中主に文書発信人として現れる「二十五号」という暗号名は、当時大伴市内に潜入し諜報活動を行っていた、通名・立木恭一郎を意味するものであることが判明している。他、文中に現れる符丁等については資料編集者が適宜注釈にて補足しているので参照のこと。
参考:文書作成に用いられていた暗号機(同型機)暗号生成の法則性から、エニグマ系の改良型と推測される
資料素材ロは、上記諜報員すなわち通名・立木恭一郎が書き送ったものと推定されるが、宛先の番地に住宅はなくその周辺にも左文字なる人物が定住している様子はないため、発送されたすべての書簡は「宛先不明」となり、差出人住所たる立木興信所に届いている。本資料素材は我方の工作員がこれら書簡を立木興信所の郵便受けから抜き去り、複写後ふたたび郵便受けに戻すという行為によって得られたものである。書簡の大半は大伴市の消印を押印されているため、当初ある種の特殊な暗号通信と思われたが、内容はごく普通の平文で記されており、機密に関わる文言は含まれていない。これがいかなる意図の元に作成されたものかは今もって不明ではあるが、状況を多角的・総合的に把握する一助になると判断し、本資料に加えるものである。
本資料においては、速やかなる状況理解を促すため、上記二素材を時系列に沿って再配置した。各章頭の符号イおよびロによって、元となる資料素材を判別可能である。なお本資料の複写は、部分・全体によらずこれを禁じる。
ロ 〇〇一
ミツコへ
そういえば、こうしてお前に宛てた手紙を書き始めて何年になるだろう。
もちろんお前がこれを読んでくれることはないし、返事をもらうこともない。だが、こういう手紙もなかなかいいものだと思わないか。
私はいま、仕事で大伴市に向かっている。お前は知らないと思うが、あの戦争が終わってから「影の首都」と呼ばれるまでに急成長した都市だ。日本がもしあの戦争に勝っていたら同じような街が大陸に造られていただろうと思わせる、整然とした近代的な計画都市。物見遊山に行くわけではないが、興味はある。
大伴での出来事も、またこんなふうに手紙に書いて送ろうと思っているから、楽しみにしていてくれ。ただし、気の利いた絵葉書などは期待しないで欲しい。私はどうもあの絵葉書というのが苦手でね。表側の狭い面積に、宛先と文章を詰め込むというのが性に合わないんだ。絵葉書の替わりに、面白い写真でも撮れたら同封するようには心がけるよ。
では、また。
恭一郎
イ 〇〇一
発 代理人二十五号
宛 東部方面連絡中継所
秘匿任務第三八九七号に関する報告(一)
任務実施要項
一.大伴市を実質支配する非公然組織およびその構成員の全容解明
二.宗教団体白鈴會の実態調査 ならびに第一項が指す組織との関連調査
三.第一項が指す組織による反体制的動向 ならびに同組織による新兵器独自開発の実態調査
付記 第三項を最重要項目とする
上記任務に本日より着手する。
まず実行地域である大伴市に列車で向かう。列車内で調査対象乙群“烏丸小夜子”を発見。
女優“鬼塚結衣”に帯同している様子である。念のため、鬼塚を調査対象丙群に追加する。
同じく列車内にて、調査対象丙群“御子神隼人”の乗車を確認する。
御子神の調査優先度は丙群だが、調査対象甲群筆頭である“黒潮豪造”との関わりが深い。要注意とすべきであろう。なお御子神は乗車中、長時間の用便があったが、その間に外部との連絡を試みた形跡はない。降車後、駅舎内にて御子神と同行する者を発見。
調査のため、通りすがりを装い話しかける。御子神の同行者は偽造国民証を所持しており、記載上は【姓名 “間宮霧子” 性別 女 年齢 二十歳】であった。しかし外見上は十四歳から十八歳と思われる。
御子神との関係は不明である。上記“間宮霧子”の人別照会を要請する。
事前調査資料によると、御子神はフリー記者で「骸骨男」取材のために大伴市を訪れているとのことだが、確認のため会話の中で探りを入れる。こちらから「鬼塚を取材に来ている新聞記者であろう」という意図的に核心を外した問いを投げかけ反応を見たところ、事前調査どおりの目的で大伴に来ているものと思われる態度であった。
なおその際、陸軍少佐“石動寛治”を駅舎内で確認する。この石動の動向は事前調査資料には記されていなかったものである。要注意と見なし、調査対象丙群に加える。
そののち、検問等での問題もなく、大伴市内への潜入に成功。
潜入後、調査対象甲群 大伴警察署および警察署長 への端緒を得るために、署長から直接の指示を受けて行動していると思われる 同警察署捜査一課刑事“新條剛”を尾行する。
継続的に観察するが、現時点において新條に特筆すべき動きはない。しかしその立ち居振る舞いを見る限り、警戒心や洞察力が高いようには思えず、きっかけさえあれば会話等による接触は容易であると思われる。以降は新條を工作対象者とし、機会をうかがいつつ早い段階での接触を試み、良質の情報源としたい。今回の報告は以上とする。
※編者註 「調査対象甲群」とは、大伴コンツェルンの長である黒潮豪造を頂点とする、大伴市を実質的に支配していたグループの構成員・構成組織を指しているものと思われる。また「調査対象乙群」は新興宗教団体白鈴會の関係者、「調査対象丙群」はそのいずれにも含まれない、比較的優先順位の低い調査対象であると思われる。これらは以降の通信文書にも度々現れるため、そのように推定可能である。また「工作対象者」という表現については、諜報戦の一般的見地に立ち、「自らの諜報活動に利用できるよう仕立て上げるべき対象者」という意味合いと取れる。なおこれは必ずしも能動的な協力者である必要はなく、自覚のないままに諜報員に情報を与えてしまう存在であってもかまわないわけである。
ロ 〇〇二
ミツコへ
今私は大伴市にいる。
さっそく、前の手紙で約束しいていた写真を送るよ。
編者註:この2枚の写真は、資料 ロ 〇〇二 に同封されていたものを複写したものである
ここはもともと山あいの小さな村だったんだが、そこにダムを造って川を堰き止め、できた平地に街を造っていったらしい。だから周囲は山に囲まれていて、小高い場所に登るとすんなり街全体が見渡せる。二枚の写真は、同じ場所から方向を変えて撮ってみたが、想像していたより表情豊かな街だ。かたや東京と見まがうばかりのビルヂング群、右端に見えるタワーは「大伴タワー」といって、もうすぐ完成する大伴の新名所だ。かたやもう一枚の写真は住宅街のような風景。まだ空き地もいくらか残っていて、あまりごみごみしておらず住みやすそうな感じがする。
お前と一平がもしまだ生きていれば、家族で一緒に見て回りたいと思う街だな。
ところで仕事の過程で、面白そうな若者と出会ったよ。トップ屋の青年なんだが、私が「ブン屋さんでしょう?」と持ち上げてやると、まんざらでもない様子だったな。少し話しただけだったが、屈託のない様子でかわいげのある男だった。いっしょにくっついている若い娘さんと、楽しそうに言い争っていてね。一平がもし生きていれば、ちょうど彼くらいの年頃になっているはずか。そう思うと、ついつい手前勝手に彼への親しみを感じてしまう。よくお前に「あなたは人なつっこい性格だから」と言われたものだが、どうやらそれは当たっているようだ。しかし、この私の性格は、今の仕事には向いているらしいよ。
恭一郎
イ 〇〇二
発 代理人二十五号
宛 東部方面連絡中継所
秘匿任務第三八九七号継続報告(二)
大伴市内潜入の同日、日没後に調査対象丙群“御子神隼人”の滞在場所を確認する。事前調査資料に記載されている、御子神が高校卒業まで居住していた大伴製薬旧社宅に滞在する様子である。
大伴駅での御子神の同行者“間宮霧子”も同所に滞在する模様。なお、間宮の人別照会に関する回答は受領した。その経歴から、丙群に相当する調査対象に追加すべきと判断する。
深夜零時前後、対象者御子神が外出。ほぼ同時に大伴製薬旧社宅に隣接する建物取り壊し現場で事件発生。当方、偶然に現場付近ですべてを目撃する。
乙群の調査対象者名簿に含まれる(編者註:すなわち、白鈴會信者である)大伴市在住“臼井昭彦”が、二体の獣人と髑髏の仮面を被った男の襲撃を受けた。臼井は逃走を試みる最中に御子神と接触、その際常人離れした腕力で御子神を五間あまり(編者註:約10メートル)吹き飛ばす。
その直後臼井は、獣人の攻撃に追い詰められ、最終的には髑髏の仮面を被った男にとどめを刺され絶命。
髑髏の男と二体の獣人は、その後速やかに現場を離れた。
髑髏の仮面を被った男は、その容貌と能力から、本任務における最重要調査対象に関わっている可能性が高い。すなわち、対象甲群が開発している新兵器を装備・使用していると推測される。
以降の報告においては、対象を通俗的な呼称にならい“骸骨男”と表記する。
なお骸骨男に付き従っているように見受けられた二体の獣人も、自動車を持ち上げる腕力、および驚異的な跳躍力を見せており、その身体能力は尋常ならざるものである。骸骨男とは異なる態様を示しているが、同様にこれらも対象甲群による兵器開発の産物であると思われる。
これら獣人および骸骨男が乙群調査対象を襲撃していた件については、特別な因果関係が存在する可能性が濃厚のため、さらなる調査を進めた上で報告する。
ただしいずれも相当な戦闘力を有しているものと見られるため、調査は慎重に行うことにする。
なお事件後の現場で頭部と羽根部分が外れた状態のペンダントを拾得。頭部の外観は事前に受領していた 標本 ト-八“白鈴會信者のペンダント”と同一である。本報告書に同封・送付するので、分析願いたい。
編者註:立木が現場で拾得した鈴
編者註:立木が所属していた諜報組織が事前に入手し、立木に所持させていた 標本ト-八“白鈴會信者のペンダント 頭部”
また、御子神は臼井昭彦死亡の直後に失神。救急により搬送され病院で手当を受けたのち、事件の重要参考人として大伴警察署内に留置された。
翌朝、調査対象甲群 大伴製薬秘書室長“神代正樹”が警察署に現れ、御子神の身元を引き受けた。
御子神と神代はそのまま黒潮豪造の邸に向かったようである。以上の状況から、御子神は大伴市内では黒潮豪造の後見を受けるであろうという事前予測は正しかったと言える。
今後の調査においては比較的接近・接触が容易な御子神の動向を注視することが、任務全般の遂行を助けると思われる。
上記の考察に基づき、黒潮豪造邸から出てきた御子神と間宮霧子を尾行する。
昼食をとろうとしている様子だったので、最寄りの定食屋に先回りし、条件作為(編者註:「条件作為」とは諜報戦の用語で、自然な遭遇が繰り返されるような状況を計画的に演出することを言う)による接触を試みる。
御子神と間宮は、こちらの想定通り定食屋に入る。会話を傍聴したところ、御子神の“骸骨男”に対する取材の方向は、通俗的な都市伝説が実在するという興味のもとにあり、当然のことではあるが兵器開発との関連にはまったく考えが及んでいないと確信できた。頃合いを見て会話による接触をおこない、念のため“骸骨男”と“神楽辰男”に関する流言とを結びつけるように誘導する。これにより御子神の着眼点を最重要調査対象から遠ざけつつ、神楽親子の取材を通じて黒潮豪造の周辺に到達するよう仕向けることができれば、こちらの調査にも好影響を期待できる。
なお、臼井の死亡は新聞報道において事故死とされていた。このことから、調査対象甲群(編者註:大伴コンツェルンを中心とする大伴市の支配者グループ)がこの地域において絶大なる影響力を行使していることがうかがえる。
今回の報告は以上とする。
イ 〇〇三
発 代理人二十五号
宛 東部方面連絡中継所
秘匿任務第三八九七号継続報告(三)
大伴市潜入から三日目。
新聞朝刊に鬼塚結衣に宛てられた殺人予告の記事あり。記事によると、予告状の文末には骸骨のマークが記されているらしい。これが“骸骨男”に関連するものか、あるいは単なる便乗者によるものなのかは今のところ不明である。
引き続き対象者丙群“御子神隼人”を観察するが、午前中は特筆すべき動きなし。
午後に入り、御子神は取材を開始。鬼塚結衣と白鈴會の接点を捜している様子。
同じく対象者“間宮霧子”も午後から行動を開始。こちらは鬼塚結衣にひたすら張り付いている。
両者とも放置して問題なしと判断し、こちらは独自に白鈴會の全容解明に向けた調査活動を進める。
宗教・思想団体への接近時における定石に従い、入信を匂わせることも含めた条件作為を実行し、複数の情報源を得ることに成功したので、数日後には詳細な報告を作成できるであろう。
なおこの日の夜、鬼塚結衣は付き人である“烏丸小夜子”を替え玉にしてマスコミの目をくらまし、なにものかと接触していた模様。未確認情報ではあるが、烏丸の行き先が大伴警察署の幹部連が頻繁に利用する料亭旅館であったという点から見て、接触の相手は調査対象甲群に含まれている大伴警察署長である可能性が高い。この事実は本任務に直接の関係はないが、後々の調査に際して有効な材料となる可能性があるのでここに付記しておく。
烏丸小夜子の調査も課題ではあるが、いかんせん有名女優の付き人であるため、常時芸能記者が側にいるという問題がつきまとう。これについては、他の乙群対象者で補う方向で考えざるを得ないか。
今回の報告は以上とする。
ロ 〇〇三
ミツコへ
戦争が終わって大陸から帰ってきたら、お前も一平もおらず、それ以来私はずっと外食ばかりだ。たまには、お前の作った手料理を食べたいものだな。昨日の昼も、「みなかみ」という定食屋で済ませたんだが、そこでまたあの面白い青年と出会ったよ。先日と同じく年端のいかない若い娘さんと一緒で、にぎやかに食事をしていた。それを見ていて私は、ずっとひとりで飯を食ってきたことを無性に寂しく感じてしまってね。もしお前と一平があんなことになっていなければ、何度でも家族一緒に飯を食えたのにな。本当に、残念でならない。
恭一郎
イ 〇〇四
発 代理人二十五号
宛 東部方面連絡中継所
秘匿任務第三八九七号継続報告(四)
潜入四日目。
午前中は昨日獲得した数人の情報源と再接触を試みる。接触頻度を増したことにより、相手方の警戒心はさらに緩んでいるようだ。夕刻まで複数の対象者を相手に同様の工作を反復する。
夕刻、御子神隼人と接触。情報交換と称して、先任工作員が確立した拠点C・喫茶店に誘う。
御子神はこちらの物言いに反感を持ったようで、黒潮に裏はないと断言。そこで、標本ト-八“白鈴會信者のペンダント”を見せつつ黒潮と白鈴會の関係を教唆。一瞬だが御子神に動揺が認められたので、今回の工作はここまでとする。
御子神、去り際に「神楽辰男は生きていて、復讐をしているという噂がある」と発言。その段階で留まられては、彼の行動が当方の活動に寄与することはない。今日の工作が奏功することを期待する。
今回の報告は以上とする。
ロ 〇〇三
ミツコへ
今日もまたあの面白い青年と一緒だったんだが、はじめてゆっくりと話をしたよ。喫茶店で、コーヒーを飲みながら。私がコーヒーを飲むなんて、お前が聞いたら意外に思うかも知れないな。だがこれも、戦争が終わって国に帰ってきてからのことだ。家にひとりでいる時間が退屈で、よく喫茶店で時間を潰していた。そのうちに、コーヒーの味も多少はわかるようになってきた、というわけだ。私に言わせれば、ブレンドなんていうものを飲むのは青二才だ。いや、これは言い過ぎかも知れない。しかしやはりもったいないと私は思う。コーヒー豆には個性があって、例えばブルーマウンテンは香りがすばらしく、口当たりは軽やかだ。対してキリマンジャロはコクが強い。これが、飲み慣れるとクセになる。さらにキリマンは深煎りと浅煎りでがらりと表情を変える。ジャワやトラジャも個性が強く、捨てがたい。お前がコーヒーを飲み始めるのなら、まずはモカやコロンビアから試してみるとよいと思う。
そういえば結婚前からお前には「あなたはよく、変なものに凝るわね」と言われてたな。まったくその通りだよ。しかし、お前と一緒にコーヒーを飲めないというのは、なんとも悔しい話じゃあないか。私もいずれそちらにいくから、その時は極上のコーヒーをご馳走しよう。
恭一郎
イ 〇〇五
発 代理人二十五号
宛 東部方面連絡中継所
秘匿任務第三八九七号継続報告(五)
潜入四日目 追加報告。
前回報告を作成した直後、事件発生。既に使用されておらず取り壊しが予定され廃墟化していた元神楽劇場建物内において、調査対象乙群“烏丸小夜子”および調査対象丙群“鬼塚結衣”が殺害された。
事件発生の瞬間に居合わせることはできなかったが、事後の調査によっていくつかの情報を得ることができた。
発生の瞬間近くを通ったアマチュア写真家 瀬川亮二が偶然撮影した写真を警察当局より先に見ることができたので、その複写を同送する。なおこの写真のネガフィルムおよびプリントは翌日警察当局に没収され、瀬川の手元には何も残されていない。
至近距離からの撮影ではないため判然としない部分もあるが、写真の右側に見える黒い人物は、継続報告(二)に記した通称「骸骨男」と容貌が酷似しており、同一人物と思われる。左上の白い獣人に関しては、一切が不明である。なお撮影者によると「シャッターを切った後、舞い落ちる大量の白い羽根を見た。言い知れぬ美しさに身体がすくみ、その瞬間を撮り逃してしまった」とのこと。しかし、現場付近に羽根または羽毛の遺留は確認されていない。
事件後の神楽劇場建物内に侵入したところ、天井から屋根に貫通する直径六尺(編者註:約1メートル80センチ)程度の穴が開いていた。建材破断面の状態は新しく、これは以前からあった穴ではない。すなわち、事件発生と同時に行われた破壊であると断定できる。他にも床の割れ・二階席扉の脱落等各所に新しい破壊痕が見られ、これにより建物内で大規模な戦闘があったことが推測できる。ただし破壊の状態から見て、加えられた力はおよそ通常の人間が出し得るものとは思えず、継続報告(二)に記した獣人、あるいはそれと同等の力を持つものが戦った痕跡であると思われる。
アマチュア写真家瀬川が撮影した白い獣人と、烏丸小夜子または鬼塚結衣との関連はいまのところ不明である。しかし、烏丸の死体発見現場が劇場の屋上だったことを鑑みると、白い獣人は鬼塚結衣ではなく烏丸小夜子と関連づけて考えるべきであろう。
なお現場でまたしても頭部と羽根部分が分かれた状態のペンダントを拾得。
諜報開始から獣人の出現は二例に過ぎないが、いずれの現場にも壊れた状態のペンダントが見られた。このペンダントは調査対象乙群(編者註:白鈴會信者)のほとんどが常時身につけているものである。以降の調査にあたってはこの点、すなわち白鈴會と獣人の関係を、十分に考慮して進める必要があると思われる。
今回の報告は以上とする。














