黒ネコの夜
朝8時台のTGVでリールに移動。これはちゃんと動いていたので助かった。さすがTGVと思ったのは、低空で着陸アプローチに入って頭上を同方向に飛ぶボーイング737がほとんど空中に停まって見えたことだ。
一時間ほどで到着。事務局に赴き、挨拶とか上映映像についての打ち合わせとかを済ますと、あとは夜まで北フランス観光。車を出してもらう。
ダンケルク海岸に行きたかったのはポール・ギャリコ(とキャメルの)『スノーグース』への個人的オマージュだったのだけど、開発が進んでカジノなんかが海辺まで押し寄せて建ち、浜辺は細くなっていた。
濁った黄緑色になって打ち寄せる波の向こうにはヨットが何艘か浮いており、ダイナモ作戦の往時を忍ばせられた。頭上にはこの地方としては珍しいまでに雲がなく、ただ水平線にだけは垂れ込めて、それがその向こうにある英本土の位置を示しているように思われた。
さらにドーバーに近いカレーに移動し、少し内陸に入ると、山ひとつくり抜いて数十メートルあるコンクリートドームで蓋をしたV-2号の発射基地が現存し、記念館になっていた。完全な地底基地だ。V-1二基(有人、無人)とV-2一基の実物も展示され、昨日パリであんな話をしていたせいか出土した墜落機(スピットファイア、Me109、B-24等々)の残骸も多数見ることができたが、それ以上に、当地から連行されたユダヤ人関係の展示が充実しており実に重々しい。日が落ちれば山の上の巨大ドームはライトアップされてカッコいいし、V-2のロケット技術はその後月着陸にまで発展したと意外にも褒め称えられているし、なんか複雑な感じの場所だ。
夜ともなればリールに帰り、市中心部の美術館の映像ホールで『魔女の宅急便』の上映と、解説、質疑応答を行う。質疑応答には、結構長い時間かけたね。
ゴシック調黒づくめの服装に身を包んだ若い女性(コスプレか?とも思ったが、実はアニメーション専攻の学生)が手を挙げ、『魔女の宅急便』のような作品に関わっていたところから『ブラックラグーン』のような心境に至る変化とはなんだったのか、と質問して来たが、そこはもちろん一人の作り手としては道のりはつながっているのだよ、お嬢さん。
